漫画の描き方をeラーニングで指導~すがやみつるさん特別インタビュー(4)

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画像:早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程にて
すがやさんが作成したeラーニング用動画より

―――――その漫画についてのお話を伺いたいのですが、すがやさんが専門としていらっしゃる漫画はどうしても手書きのイメージが強いのですが、漫画とその技術をeラーニングで獲得することの親和性はあるのでしょうか?

すがやさん
「確かに漫画の世界では一つの線を書く際の強さや雰囲気など、実践的な場で伝えなければならないことが多くあります。一方で現在の漫画を取り巻く環境は、すっかり電子化していて、PCとインターネットが使えなければ、仕事にならないくらいです。例えば、原稿の納品は電子ファイルでの送稿が当たり前になっています。出版社への納品はもちろん、出版社からの修正依頼もPDFでやりとりするなど、電子上で完結することが出来ます。
 また、出版業界の不振と電子書籍分野の伸びについてネットでも話題になりますが、電子書籍で最も売り上げを伸ばしているのは漫画の分野です。スマホやタブレット端末で手軽に漫画を読むことができるようになったからでしょう。新幹線に乗っていても、車内でスマホやタブレット端末を使って漫画を読んでいる乗客がとても増えています。
 制作に関しても漫画専用の制作ソフトもあり、液晶タブレットの画面で漫画を制作することも可能になりました。本学には、40台ほどの大型液晶タブレットを並べた教室もあり、デジタルの作画教育に使われています。また、私が所属するコースでは、小型の液晶タブレットを揃えて、学生に貸し出しています。これらすべてが直接的にeラーニングと関わっているわけではありませんが、機材やソフトの使い方といったことは、eラーニングのシステム以外にサイボウズLiveやLINEを使って、いつでも好きなときに質問ができるようになっています。
 私が大学で担当している授業はキャラクターデザインに関連するものが中心ですが、デジタルを中心としたキャラクターデザインのスキルを身につけた学生が目指すものは、漫画家やイラストレーターだけではありません。ゲームのキャラクター制作や広告用のサイネージ制作といった分野など、進路はとても広くなっています。
 ゲームや広告の世界では、情報のやり取りや創作活動にもデジタルが当たり前に使われていますし、また同時にネットの気軽さとは反対の厳格な著作権の問題なども存在しています。そういった時代性を考えても、ICTリテラシー全般にも気を配りながら学生に漫画やイラストを教えていくことが大切になります。」


―――――再び教育工学、インストラクショナルデザインについて伺いたいのですが、すがやさんが取り組まれた研究において漫画と教育工学はどういった形で結びついたのでしょうか?

すがやさん
「インストラクショナルデザインの世界でよく紹介されるものに、1955年にアメリカの教育学者ベンジャミン・ブルームが提唱した「ブルームの教育分類学(タキソノミー)」というものがあります。これは、あらゆる教育目標が「1.身体の器官を使う運動スキル、2.記憶や判断などの頭を使う認知スキル、3.動機の維持や決意を決める態度スキル」の3つに分類できるというもので、それぞれの達成段階に指標を用意し、到達度を測るというものです。インストラクショナルデザインの授業を受けたとき、すぐにピンと来たのは、「教育目標の3分類は、漫画の教育にピタリと当てはまるではないか!」ということでした。なぜなら漫画は、「1.作画技術(運動)、2.アイデア・ストーリー(認知)、3.デビューしたい人気作家になりたいといった夢や憧れ・締切を守る決意(態度)」といった要素から成り立っているからです。
 インストラクショナルデザインでは、運動スキルは反復繰り返しによって、認知スキルは取材や資料を調べてデータを蓄積することで、態度スキルは学校や職場などの「場(コミュニティ)」に参加することで、それぞれ上達するとされていますが、漫画も、まさにこの通りです。作画(絵)は、ひたすら描くことで技術が上がります。アイデアやストーリー作りは、データの検索法と組み合わせ方を学ぶことで、その技術が上達します。態度(やる気)は、同じような仲間がいる「場」に参加することで、そのスキルが向上します。とりわけ態度の向上(やる気の増進)については、同人誌のサークルやSNSのような学校以外の場も、大きな効果を果たしていると考えています。漫画家志望者が同じ場に集まり、自然に切磋琢磨してしまう状態については、勝手に「トキワ荘効果」と命名させていただきました。
 以上のようなことを念頭に私は、「漫画を描いたことのない方にeラーニングで漫画の描き方を指導できるか」を、eスクール卒業後に進んだ早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程の研究テーマとし修士論文にまとめました。
 この研究は、漫画の初心者に対してeラーニングで4コマ漫画の描き方をレクチャーするもので、実験に参加してくれた方の大半が、4コマ漫画を完成させることができました。約30分の動画を使ったものですが、ほとんどの人が楽しんで、漫画を描いてくれました。この4コマ漫画のメソッドは、いま、早稲田大学人間科学部の1年生も、授業で体験しています。
 また、私自身も京都精華大学で、学生だけでなく、体験授業にやってくる高校生も対象に、この4コマ漫画の授業をやっています。こちらは教室での対面授業ですが、意外だったのは、授業の中で取り入れた活動の副次的な効果が、教育心理学系や臨床心理学系、コーチングといった分野の研究者の方々から注目していただいたことでした。」

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画像:すがやさん作成のeラーニング用動画「4コマまんがに挑戦」より
※以下のリンクでYoutube上の動画を再生します
・キャラクターのつくりかた(1)

・キャラクターのつくりかた(2)

・4コママンガの描き方(1)

・4コママンガの描き方(2)



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