学習者の興味を引き出すeラーニング教材とは~すがやみつるさん特別インタビュー(3)

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画像:すがやさんによる「表現ナビ」ビデオ教材:
「なぜパソコンを使うのか?:赤松健先生インタビュー」より

―――――教員としてのご意見を伺わせていただきたいのですが、独習というスタイルのもう一つの問題として、eラーニングの活用における学習者のモチベーション維持があるかと思います。実際のところ大学での授業はどうでしょうか?

すがやさん
「現在、京都精華大学のマンガ学部でeラーニングを用いた授業を行っていますが、昨年の例でいうと、受講生約250人のうち約60人が途中で脱落しました。eラーニング科目が1科目しかないため、eラーニング科目の受講が習慣化されず、受講を忘れてしまう学生が多かったようです。このeラーニングに親しめない学生の数は、年々、増加しています。 京都精華大学マンガ学部では、全学生にPCの購入を義務づけているのですが、絵を描くことやネットの動画を見ること以外にはPCを使わない学生が増えています。PCに関心のある学生は極めて高いスキルを身に付けていますが、そうでない学生も多くなっています。これはスマホの普及によるところが大きいのではないかと考えています。
 eラーニングのシステムを本格的に活用するためにはPCを使ってもらわなければなりませんが、授業への参加が伸びない学生は、動画の再生時間自体も多くありません。ここで重要なのは、学習者に合わせた教育プログラムを用意することにあるのではないかと思います。例えば動画のプログラムも、学生が親しんでいるスマホに対応させものを用意するといったことです。この辺りは予算や人員の問題もあるので、学内での本格的な取り組みが必要になります。」


―――――やはりハード面での問題を解決することが重要になるのですか?

すがやさん
「そうですね。ただ、それだけではモチベーションの維持と言いますか、eラーニングで用意した動画などへの興味にはつながりません。興味を持ってもらいながら授業の参加者に継続的に動画などのコンテンツを見てもらうためには、最初に述べた「手作り感」と言うか、教員側のしっかりとした教材の作りこみも重要です。むしろそちらの方が大切になるかもしれません。教材作成の企業などが作った既成の授業コンテンツもいろいろ見ましたが、学生が身を乗り出すような「おもしろい講義」はほとんどありませんでした。見た目は貧弱でも学生が顔を知っている教員が画面に登場する授業コンテンツの方が、やはり親しみが湧くものです。そのような意味で、教員が自作するコンテンツに勝るものはないと考えています。
 例えば、私の授業ではエクセルの使用法を学ぶ時間もあります。私が教え出した当初、この授業では一般的の請求書の作成などを教えていました。しかし、請求書の作成を課題にした授業では、学生のモチベーションは上がりませんでした。 そこで、翌年から漫画の単行本を扱った内容に変えました。その他にも、実際に漫画家として活動し出してから必要になる原稿料と印税、源泉徴収、確定申告などの話題を取り入れて、これらをエクセルで計算する方法を見せました。学生にとって身近な話題でもあり、「自分がデビューしたら」「売れっ子になったら」と自身の立場に引きつけて考えてもらえたようで、授業前のアンケートではマイクロソフト・オフィスの中で一番苦手と考えられていたエクセルが、期末のアンケートでは一番自信がついたソフトになりました。
 このような授業内容の変更は、インストラクショナルデザインで学んだ「領域固有性と領域一般性の問題」の考え方を応用したものですが、ほかにも心理学の知見をベースにした教授法をいろいろ試しています。」

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画像:Moodleを使用した「表現ナビ」授業ページ
すがやさんの授業ではICTリテラシーに関してクリエイターが知っておかなければならない著作権の問題などもeラーニング上で行っている。合計で約50分の動画と小テストの構成。

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画像:すがやさん自作の「表現ナビ」ビデオ教材
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